『新たな社会的住宅 開発と運営の試み -事例集- 』刊行間近

■似て非なるもの、「シェアハウス専門事業者」と「シェア的居住の支援者」

昨年よりNPOコレクティブハウジング社と一緒に進めてきた「平成29年度国土交通省 先駆的空き家対策モデル事業」。その成果物のひとつとして、『新たな社会的住宅 開発と運営の試み -事例集-』を3月に刊行します。

空き家を活用して住まいのセーフティーネットをつくる試みが、企業から自治体、NPOまで、さまざまな団体によって始まっています。この小冊子では、マスコミ等で先進的として取り上げられている13の“新たな社会的住宅”の運営者を取材、それぞれの事業コンセプトと成り立ちの経緯、運営ノウハウにフォーカスしてお話を伺っています。今回この事例集プロジェクトに関わらせていただだいたこと、取材にご協力いただいた運営者の皆様には大変感謝しています。

お話を詳しく伺うなかで、新聞等の短い報道では「シェア居住の成功例」くらいに、ひとまとめの印象をもたれてきたひとつひとつの試みが、実にさまざまな問題意識から事業がスタートし、異なる目標を目指して運営されていることがわかりました。結果としては類似例に見えている取り組みも、運営者によって本質はまったく異なるものをもっていることもありました。

対象者や方法論に差異があるとはいえ、すべての事例に共通しているのは、運営者(企画者)が「他人が一緒に住む」ことのメリットを確信しており、居住者コミュニティに対する日常的なフォローをとても重視しているということです。民間企業の事業主も「シェアハウスは儲かる」という発想では事業をスタートしてはおらず、昨今の委託シェアハウスの契約破綻問題を引き起こしているようなシェアハウス専門事業者と、この冊子で取り上げてきた「シェア的居住の支援者」とは、まったく似て非なるものといわざるをえません。

 

■事業に使用した建物の特徴をマッピングしてみた

とはいえ「シェア的居住の支援者」もボランティアでは事業継続できません。不動産賃貸事業の一形態でもある以上、事業規模(集合住宅か、個人宅か、運営部屋数は、等々)と立地の市場性によって、活動が大きく規定されてしまいます。そこでいったん運営のソフト面は置いておき、ハード面(使用している建物の特性)のみに注目してみることにしました。

下の図は、縦軸を「運営規模の大小(室数1戸の戸建て住宅〜戸数50以上の集合住宅まで)」、横軸を「立地の市場性の高低(都心で交通利便性が高い〜郊外で交通利便性が低い)」として、記事の13事例をマッピングしてみたものです。


これでわかったことは当たり前の話ですが、シェア住宅の居住者のニーズも、より市場性の高い左方向へと引きずられるということです。ある程度ボリュームのある集合住宅(持ち主は事業体)が活用でき、なおかつ好立地であればリノベーションを行ってもビジネスとしても成り立ち、事業的領域で解決できます(下図①)。一方、戸建ての空き物件を活用する場合は、個人所有者との事業コンセンサスを得るのに時間と手間を要します。このため営利事業としては成立しづらいものの、利用ニーズが高い領域(下図②)でもあるので、福祉的な支援を得ながら“社会的住宅”として活用されています。

①と②ほど立地の市場性が高くなくても、シェア居住に価値を見いだしている人々が集まってきている領域が③と④です。NPOなど小規模な支援団体によるさまざまなシェア居住の試みは、この領域をステージとして数多く生まれています。

一方、たとえ「COCO湘南」のようにコンセプトが万人に受け入れられたような高齢者グループリビングでも、交通不便な土地(⑤)で2棟目を開業してしまったために満室に至らず、数年で閉館に至ってしまったというケースがあります。

また運営室数が少なすぎる場合も、支援団体として収支に悩まされることになってしまいます。このため「ゆいま〜る」では、1カ所で30室以上のまとまった戸数の空室があることを、事業開始時の収支ラインと捉えています。

 

■対象を限定しないことで多様な実践を生み出してきたコレクティブハウス

NPOコレクティブハウジング社の活動の場合は、支援する領域を広く捉えようとしています。領域としておおよそ③の集合住宅領域で実現を目指しているのが「コレクティブハウス」であり、④の個人所有戸建て領域をカバーしようとしているのが「タウンコレクティブ」であると言い換えることもできます。

対象を「シングルマザー」や「高齢者」と絞らないこと、「誰もが住める」とすることで、福祉分野からは外れることが多く、コンセプトが伝わりにくくなっているコレクティブハウジングですが、対象を絞らないことは、より柔軟に物件の立地に合わせたプランニングができることにもつながっています。すでにコレクティブハウスを5棟、タウンコレクティブを7棟実現してきた実績と経験を踏まえ、幅広い案件に対応していきます。

そして、ここで紹介したようなひとつひとつの小さな活動が起点となって、共感を呼び起こし、点から線へとつながっていき、連鎖しながらより大きな変化へと波及していく。それが地域社会のあり方をも問い直し、いつか社会システムや制度のリノベーションにつながることを願ってやみません。

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と、本稿のまとめをしている最中に、またもやシェアハウス投資の(株)スマートデイズ破綻のニュースが飛び込んできました。新築だからといってシェアハウスに人が集まるわけでもなく、安いからといって皆がシェアハウスに住みたがるわけでもありません。シェアハウス・バブルが崩壊し、「シェアハウスは儲からない」「空き家対策にはなりえない」と正しく理解された後にこそ、志のある「シェア居住の支援者」が活躍するときがやってくるのだろうと思います。